永久の彼方

夜の校舎




僕は白い息を吐きながら学校に向けて自転車をこいでいる。最近は夏も過ぎ去ってしまってすっかり秋模様だ。こうして夜走る時には上着が必要な気がしてきたなぁ。

僕には1つ秘密がある。たまに立て付けの悪い旧校舎から学校に侵入しているんだ。





「お、やっときたなぁ。」

屋上に出たところでこちらに手を振る影があった。ひとつ上の僕の先輩だ。

「先輩早いですね、今日こそこっちのほうが早いと思ったのになぁ。」

さっき『僕』には、といったが本当は『僕ら』二人の秘密だ。いわゆる共犯者?

「さて、そろったことだしお茶入れるね。」

と先輩の声、まぁ、内緒のお茶会を開いているんです。





さてさて、何でこんな時間にこんな所に来ているかと言うと、僕はもともと星ってやつが好きで夜になるとちょくちょく眺めたりしてるんだ。この学校に入学して間もないころ、旧校舎に迷い込んだときに偶然に鍵が簡単に外せる部屋を発見してたまの観察に使うようになったのが始まり。ちなみに先輩と一緒にお茶会になっているのは、先輩に偶然発見されてしまったからだ。その時にしかられるかと思えば、

「よし、そんな寒空の下でがんばっている後輩にあったかいものでも差し入れしてあげよう」

「へ・・・?」

なんていわれたのが始まり。理由を聞くといつも、

「ん〜、理由?理由、理由・・・」

と、自分でもよくわかっていないらしい。そして

「まぁいいじゃない、キミも私も困ってるわけじゃないし。」

なんて言われてなんだかはぐらかされたような感じになる。まぁ別に先輩が来てるからって困ってるわけでもないし、まぁいいのかな。

「しっかし、こうして来ている私が言うのもなんだけど、キミ、物好きなのか何なのか、変わったやつだよねぇ」

「先輩には言われたくないです・・・」

理由もなく来ているこの人に言われたくない気がする。一応僕は趣味で来ているんだけどなぁ。まぁ、そのために校則違反なんかしちゃってるわけですが・・・


「うん、今日はいい感じだ、よく見える」

夜もだいぶ更けてきたからかオリオン座が見えていた。

「あれ、なんていうんだっけ。小学校のころに習ったはずなんだけどなぁ・・・」

先輩も見ていたようだ。お茶の準備をしつつそんなことを言っている。オリオンは形は印象的だけど名前を忘れる人もいるんだなぁ、なんて思ってみたり。

「先輩、分からないんですか?相当有名なやつですよ、あれ」

う〜ん、と先輩は悩んでいる。しかしどうでもよくなったのか、気づけばお茶の準備に集中していた。

「今日のお茶請けはなんですか?」

実は結構こういうのを楽しみにしていたりする。先輩のお茶請けはわざわざ手間暇かけた手作りで結構凝っていて、それでいてかなりおいしい。おかげで最近は来る回数が増えがちだ。それに付き合って毎回用意してくれる先輩はかなり大変なような気がする。しかし、本人気にしてなさそうだしなぁ・・・




「先輩って星見るのってどう思います?」

ふと、自分の趣味について振ってみた。理由は特にはない、ただ、なんとなく聞いてみた。

「う〜ん、私は星座の話とかぜんぜん知らないからなぁ。
星ってさぁ、何万光年って私たちが考えもつかないような距離から見えてるわけでしょ、見てると自分の小ささとかに気づいちゃうし・・・、けど、同時に、なんていうのかな、とにかくすごいって思うよ。だってさ、この宇宙って中に私たちがこうしている奇跡って相当すごいんだと思うの。その中でさらにこうして今、そういうことを認識できるのってとっても、とにかくすごいって思うの。」

「・・・」

「ん〜?、何かおかしな事言った?私、」

「そんなことはないですよ。」

別にそういうわけじゃない、ただ、僕も同じ事を思っていたからちょっとびっくりしただけ。

「おかしいとかじゃなくて、こうしている奇跡ってすごいなって僕も思うんです。だから心境言い当てられたかと思って・・・」

「あ、キミもそう思うんだ。いいねいいね、意思疎通?、以心伝心?、分かり合えるっていいよね。」

と先輩は笑顔で言っている。星空をバックにしているその笑顔に気づけば思わず引き付けられそうになって、あわてて言い返した。

「以心伝心は言いすぎなような気がしますけど・・・、でも分かってもらえるのはうれしいですね。」

「だよね〜。」

少し早鐘を打っていることを気づかれないよう、視線を前に戻した。

「「あっ」」

二人して同時に声が出た。流れ星が偶然にも流れていた。

「もったいない、願い事、忘れてたよ。」

「願う暇がなかったなぁ。」

「へぇ、キミは何を願おうとしていたのかなぁ?」

「そういう先輩こそ、何を願うんですか?」

「ん〜?、内緒だよ。」

「んじゃ、こっちも内緒です。」

「えぇ〜、ケチ〜。」

「それは先輩も一緒です。」

「それもそっか。」

「そうですよ。」

二人して、笑いあう。ここでは恥ずかしくていえないけど、今流れ星に願うとしたらひとつ・・・
『どうかこの暖かい時間が、少しでも長く続きますように・・・』

「あっ」

「どうしたんですか、先輩?」

「今、もう一個流れたんだよ。」

「え?気づかなかったなぁ・・・」

「今度もお願い間に合わなかったなぁ。」

「まぁしょうがないですよ。」

といいつつ思う。どうか、今見えなかった流れ星、三回繰り返せなかったけど、流れたときに思った想いが、少しでもかないますように・・・








〜あとがき〜


初めてSS書きました。
しかし長いと友人に怒られたり;
個人的な感性でノンプロットだとこんなものだと思ってるんですがいかがでしょうか?

とにかくここからサイトの第一歩、がんばっていきたいと思います。
byブルーハース



2007年11月15日